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 第1回 「医療の質と福祉サービスの質・・・安全性の重要性」
 第2回 「評価手法の改善に視点」
 第3回 「少子化」
 第4回 「利用者による介護サービス(事業者)の適切な選択に資する情報開示の標準化について」
 第5回 「<顧客の所有物>について」
 第6回 「1件の評価を終えて」
 第7回 「介護サービスの《設計・開発》について
第4回 《利用者による介護サービス(事業者)の適切な選択に資する情報開示の標準化について(中間報告書)》について


社団法人シルバーサービス振興会が厚生労働省平成15年度老人保健健康増進等事業費により実施した「介護保険サービスの質の評価に関する調査研究事業」の検討結果が、中間報告として公表された(www.espa.or.jp)。2003年9月から始められ、介護保険サービスの質の評価に関する調査研究委員会6回、部会長会議8回、7部会36回での検討を経てまとめられたものである。

その骨子を紹介すると、まず、『T.はじめに』において、
○“介護保険制度の下での「介護保健サービスの質の評価」として、「情報開示の標準化」という新しい仕組みを提案”である、
○「情報開示の標準化」は、“介護保険制度の基本理念である「利用者本位」、「高齢者の自立支援」、「利用者による選択(自己決定)」を現実のサービス利用において保障するための仕組み”である、
○「情報開示の標準化」は、“全ての介護サービス事業所を対象として、現に行われている事柄(事実)を、第三者が客観的事実に基づき確認し、その結果を定期的に開示する”、
○「情報開示の標準化」により、“利用者が開示情報を活用しながら自ら主体的に介護サービス事業所を選択することを支援”し、
 “利用者が選択の保障がなされ、事業所によるサービス改善への取組みが促進され、サービスの質による競争が機能し、介護サービス全体の質の向上に期待”すると記されている。
ついで、『U.「情報開示の標準化」の趣旨・目的』のなかで、“介護保険制度の基本理念を実現する環境整備”のため、@介護サービスの供給量の確保、A利用者の選択に資する情報提供の環境整備が必要であるとし、「情報開示の標準化」は、後者の必要性をうけたものであることが知られる。
『V.「情報開示の標準化」の具体的内容』では、
○基本的考え方として、“全ての事業所についての標準化された情報の定期的な開示”、“第三者が客観的事実に基づき確認でき”、かつ、“その調査結果の全ての開示”、“事業所の格付けやサービスの画一化を目的としない”ことをあげている。
○事業所情報開示項目は、基本情報項目(基本的な事実情報であって、開示だけで足りる項目)と調査情報項目(現に行われている事柄(事実)を前提として、調査員が客観的事実に基づき確認し開示する項目)から構成され、サービスごとに定められる。中間報告では、訪問介護、訪問入浴介護、福祉用具貸与、通所介護、特定施設入所者生活介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、の7サービスについて、それぞれ項目案が示されている。
 【例】 介護老人福祉施設
 基本情報項目
 1.事業者属性7項目
2.施設属性17項目
3.職員体制8項目
4.料金体系3項目
5.経営指標、情報提供4項目
6.付帯情報8項目
7.その他(自由記入欄)
 調査情報項目
 大項目2項目:実際に開示項目を活用する利用者側の視点に立って次の2区分を設定する。
@サービスの内容・水準の確保、Aサービスの質を確保するための組織・運営
中項目12項目:利用者の立場に立ち、介護保険の基本理念が具体的なサービス提供の中で実現されているか、利用者の尊厳の尊重や消費者保護等の視点に立ったサービス提供等が実現されているか、を確認する。サービス情報の提供・案内、他
小項目40項目:具体的に確保すべき内容を示すものとして、サービスごとの特性を踏まえて設定される。情報の提供・案内、他
判定基準107項目:小項目を判定するための基準
客観的判定材料:判定基準について、数量、頻度、マニュアル・記録の有無等で事実を確認する。約380項目
○実施主体としては、都道府県単位に設置されることになるようです。
○調査情報項目の調査方法は、年1回程度、複数の調査員が概ね2日程度、事業所を訪問して行われる。
○調査員は中立・公正な調査ができる者であることとして、守秘義務、倫理や行動規範の遵守、調査を円滑に遂行できる人格適性が求められ、必要な研修が要件とされている。
○費用負担のあり方については、事業所負担とし、小規模な事業所の負担能力に留意すると記されている。
○開示される情報の内容は、“事業所に関する情報の比較検討が可能となることが必要であり、全ての事業所に関する調査結果の全てが開示されることが必要”と考えられ、開示の方法としては、“利用者の事業所選択に適切に結び付く方法”であることが必要とされ、例えば“インターネットによりより広く開示する、事業所内への掲示、重要事項説明書への添付”があげられている。

 さて、今後の動きは、7月に宮城、茨城、富山、愛知、滋賀、廣島、福岡の7県で第1次試行が行われ、年末には47都道府県で第2次モデル事業が実施され、中間報告書で提案された方策の検証と検討が行われるということである。

 引用・要約がやや長くなったが、中間報告書の骨子を理解できたとして、若干の考察を加えてみたい。
1)介護サービスの品質マネジメントという観点から、10万ヶ所を超える(しかも増え続けると予測されている)全事業所を対象とする制度設計において、ISO9001:2000品質マネジメントシステムの要求事項を適用して考えてみると、例えば「設計の妥当性確認」に関して、“指定された用途又は意図された用途に応じた要求事項を満たし得ること”が確実になっているか、言い換えれば、“介護保険制度の基本理念である「利用者本位」、「高齢者の自立支援」、「利用者による選択(自己決定)」を現実のサービス利用において保障する”という要求事項を満たし得るかということを検証・検討しておく必要がある。
2)これまでの仕組みである「監督官庁による指導監査」、「第三者機関による第三者評価」との関連で見て、これらの仕組みの限界を指摘して、新しい仕組みの必要性を強調しているが、果たしてそうなのか。
強制力を持つ指導監査は“開示を目的としておらず、利用者が指導監査情報を活用することは難しい”として退けられているが、情報公開の社会的要請の流れからして理解しがたく、規制緩和が推し進められるなかで行政が監視・事後規制に重心を移していくとすれば、その監視情報を積極に公開し活用することこそ望まれる。
また、第三者評価に対して“事業所の任意性が基本的前提となり比較検討情報として一定の限界”があるとされていることに疑問がある。「利用者本位」の見地に立てば、「事業所の任意性」のなかに事業所の意思を読み取るならば“限界”というより“積極性”を見ることができ、重要な要素であると考えられる。
3)具体的な実施方法をめぐってこれまで検討・研究し尽くされていると思われるが、敢えて「情報開示項目」について次の点を指摘したい。
  先にあげた「介護老人福祉施設」の例に見られるような、「基本情報項目」及び「調査情報項目」について、複数の調査員が2日程度の訪問調査で客観的事実を確認できるのか、という疑問である。事前に事業者自ら記入した(標準的に作成された)記入票を確認する手法によるとされているが、膨大な “客観的判定材料”の全てを確認することはできず、いわゆるサンプリングによることとなるのではないか。これは<見た限りおいて有効である>ことを意味し、利用者の選択に資する情報提供という制度の根幹に関わる問題を含んでいると考えられる。

  介護サービスの品質管理を国家的規模でいわば社会的品質管理を展開しサービスの質の向上を目指すことの重要性にはまったく異論がない。これまで企業で実用されてきた手法がそのまま適用できないかもしれないが、わが国の工業製品の品質の高さは、企業の任意性に発して懸命な努力により到達したものであることを認識しておきたい。
社会福祉事業の世界が措置制度に示されていた法令・規制の社会から利用者選択のもとにおける自立経営の世界へ移行したうえからは、従来型の発想にない品質マネジメントを推進することが求められる。

なお、第三者評価については、さる5月7日、厚生労働省から都道府県知事に対し「福祉サービス第三者評価事業に関する指針について」が通知されているが、これについては後日を期したい。(2004.6.6記)

【参考】
社会福祉法第75条(情報の提供) 社会福祉事業の経営者は、福祉サービス(社会福祉事業において提供されるものに限る。以下この節及び次節において同じ。)を利用しようとする者が、適切かつ円滑にこれを利用することができるように、その経営する社会福祉事業に関し情報の提供を行うよう努めなければならない。
2 国及び地方公共団体は、福祉サービスを利用しようとする者が必要な情報を容易に得られるに、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。

同78条(福祉サービスの質の向上のための措置等) 社会福祉事業の経営者は、自らその提供する福祉サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずることにより、常に福祉サービスを受ける者の立場に立って良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければならない。
2 国及び地方公共団体は、福祉サービスを利用しようとする者が必要な情報を容易に得られるに、必要な措置を講ずるよう努めなければならない。(K.H 記)

 


以上、コラム
でした



お知らせ

『精神障害者ホームヘルパー養成研修〔第6回〕』を、5月13日(土)、20日(土)、27日(土)に開催すべく東京都知事へ指定申請中です。


  
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